身元保証人の損害賠償

身元保証人の損害賠償

身元保証人の損害賠償

子供は会社員ですが、先日、会社の備品を壊してしまいました。私は保証人になっており、会社から損害賠償を請求されてしまいました。 請求額すべてを払わなくてはならないのでしょうか?

原則としてあなたは、子供が会社に対して与えた損害をすべて賠償しなくてはなりませんが、「身元保証ニ関スル法律(以下、身元保証法)」により、責任の緩和がなされています。

 

身元保証契約とは、会社が採用した労働者の行為によって損害を与えた場合に、身元保証人がその損害を填補することを約束する契約です。損害額を決めるには、使用者の監督上の過失の有無、身元保証人が身元保証をしたときの事情、そのときの注意の程度、被用者の仕事の内容など、一切の事情が考慮されることになっています。

 

その賠償責任について争いが生じたときは、最終的に、裁判所で判断することになりますが、この場合、会社の損害賠償請求は、その監督に関する過失の程度などにより制限的に決定されています。判例では、「会社にも業務命令の徹底やチェック体制に不備があるとして、3割の過失を認め、また身元保証人の責任については、その業務の危険性に照らし、責任の重大性について十分説明しなかったとして、その賠償義務を損害額の4割としているもの」があります。

 

まず確認すべきことは、 
@身元保証契約の有効期間内での事故かどうか確認する。( 期間を定めない場合3年、最大5年。ただし5年毎の更新はできます。)
A会社が身元保証人へ任務や任地等の変更通知をしているか調べる。 (身元保証法第3条)
B賠償額があらかじめ定められたものかどうか確認する。

 

身元保証期間については、契約により自動更新条項が入っていることがありますが、これをそのまま有効と認めてしまうと、身元保証法が有効期間を制限しようとしたことが無意味になってしまいます。そこで判例は、具体的事情により結論は分かれていますが、こうした条項を容易に有効とは認めない立場にたっています。

 

また会社は、労働者の業務上の事故により、身元保証人に責任を生ずる恐れがあるときや本人の任務、任地を変更したときは、そのことを身元保証人に通知する義務があります。また身元保証人は、これらの事実を通知により知ったときは、身元保証契約を解除できることになっています(身元保証法第4条)。さらに、賠償額が労働契約であらかじめ定められているような場合、その賠償請求は無効とされます(労働基準法第16条・身元保証法第6条)。

 

今後の対応としては
@労働者が事故を起こしたときの状況(過失の有無・程度、会社の業務管理の状態)と損害額の算定資料を提示するよう求める。
A賠償額について専門機関の判断を求め比較する。

 

身元保証法第5条は「事故が発生した場合、身元保証人の損害賠償責任の有無とその金額について、裁判所は、使用者の監督責任、身元保証をするにいたった事由、労働者の任務、身上の変化、その他いっさいの事情を考慮して決定する」としていますので、使用者にも過失があったとして、賠償額は軽減されることがあります。

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