労働時間について(作業準備時間の取扱い)

労働時間について(作業準備時間の取扱い)

労働時間について(作業準備時間の取扱い)

私の会社では、勤務時間は午前9時から午後6時までで、休憩時間が1時間ありますが、作業準備のために15分前に出社するように言われています。この15分間は、労働時間に入らないのでしょうか。

出社時間から始業時間までの間に行われる作業準備が、会社命令の場合または労使慣行によるものである場合には、労働時間になります。そして労働基準法上の労働時間に当たるかどうかは、客観的に判断されるもので、就業規則などで労働時間とされた時間が、そのまま法律上も労働時間と扱われるわけではありません。労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令の下に置かれていて労務を提供している時間をいいます。

 

「労働時間」という用語は、休憩時間を含めたもの(拘束時間)を指すこともありますが、労働基準法上は休憩時間を除いた実労働時間を指します。労働時間については、労使当事者が就業規則や労働協約、あるいは個別労働契約により決定できるかという問題が生じますが、労基法は当事者の合意に優先する強行法規であることから、当事者の主観的な意思によっては左右できず客観的に決まるものであるという理解が一般的です。最高裁も最近、こうした立場をとることを明らかにしています

 

そうすると、次に、「労働時間」とは客観的にどのように定義されるかが問題になります。この点については、従来から様々な見解が唱えられてきましたが、最高裁判決は、通説的な立場に従って、労働時間とは労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間であるとする見解(指揮命令下説)を採用しました。

 

さて、具体的にどのような時間が労働時間とされるのかです。そこでいくつか具体的類型を見てみましょう。まず、店員が顧客を待っている間の手待時間は、実作業を行っていなくとも、一般に労働時間に当たると解されています。ビル管理会社の従業員が与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が制約されることや、仮眠中も突発事態への対応を義務づけられていることを理由に、労働時間に当たるとする判例が多くみられます。

 

また実作業に入る前や作業終了後の更衣時間については、判例の結論が分かれていましたが、最高裁は、使用者が造船所の労働者に事業所内での作業服等の着脱を義務づけていた事案においては、就業規則等の定めにかかわらず、そうした更衣時間は労働時間に当たると判断しました。ただし、最高裁は、そうした更衣に要する時間も「社会通念上必要と認められるものである限り」労働時間に当たるとして、一定の制限を付していますし、一般の事務職の制服についての更衣時間に関してまで及ぶかは、必ずしも明らかではありません。

 

法定労働時間は、週40時間、1日8時間(休憩時間を除く)と定められています。なお常時10人未満の労働者を使用する商業・映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保険衛生業、接客娯楽業の場合、週44時間とする特例措置があります。使用者は、この法定労働時間内であれば任意に労働時間を定めることができます。

 

しかし、使用者が法定労働時間を超えて労働者を働かせるには、労使間で労働基準法36条に基づく、いわゆる三六協定を結び、労働基準監督署に届出る必要があります。また実際労働させた場合には、割増賃金を支払う必要があります。あなたの場合、1日の法定労働時間を超えていますので、労使間で三六協定が結ばれていない限り、15分前に出社し作業準備を命じることは違法な取扱いとなります。

 

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